園長コラム

2018.09.03

メイキング オブ 幼稚園

昼間の暑さは相変わらずですが、朝夕がしだいに涼しくなり、陽の傾きが秋の訪れを教えてくれます。夏期保育の3日間を終え、2学期が開始されます。

幼稚園では夏を乗り越えて少したくましくなった子ども達の元気な姿で溢れています。夏休みという時間が子ども達を成長させてくれたのだと思います。又、職員も夏休み期間に深めた学びを2学期という時間の中で生かしてくれることでしょう。クラスの中では夏の思い出を語り合いながらも、16日(日)のスポーツフェスタまでを駆け抜けていきます。

さて、私個人も夏の研究テーマであった「子ども達がどんな環境に置かれようともたくましく生きていくために今必要なこと。目には見えず・テストでは測れないけど大切な力は何なのか」ということに課題意識を持って学びを深めました。幼児教育とは実に多様性に溢れ、様々な要素から子ども達の成長の姿を語るので、「大切なことはたった一つ。〇〇です。」ということはなかなか言えません。しかし、一つ一つの活動や子ども達の経験からこんな力が育っているというエピソードには、現場の職員でも納得できることが多々あります。研修会の講演の中でこんなエピソードを聞くことができました。(細部については事実と違う可能性あり)

とある幼稚園の年長クラスがナスを育てることになりました。

プランターに種を植え、茎が伸びてきたら支柱を立て、ナスが大きくなっていきます。そして、「さあ、そろそろ収穫だ!」という時になって、何者かにそのナスをかじられてしまいます。どんな生き物がかじったのだろうとみんなで考えました(想像力)が、カラスがかじったのだろうということに落ち着きました(推察力)。しかし、もうカラスには食べられたくないので、どうしたらいいんだろう?という話し合いをします(思考力)。カラスはナスを食べる悪い奴だという雰囲気の中、「でも、カラスもお腹が空いたらかわいそう」と女の子が発言をします(思いやり)。各ご家庭でも話し合ったのでしょう(情報収集力)。ある子が「うちのじいちゃんの田んぼにかかしがある。かかしを作ったらいいんじゃない?」と提案します(提案力)。そこから、みんなでかかし作りが始まります(協同する力)。試行錯誤ののち、みんなでオリジナルなかかしを作り上げます(創造力)。そして、カラスに食べられることは無くなりました(問題解決力)。

こういった力が幼稚園の中で行う“活動”の中で育っているというお話でした。

なぜ幼稚園は小学校のような教科学習ではなく“活動”なのか。幼児期に育つものを幼稚園で育てる上で、この時期の特性とは何かと考えたときに、私はこんな仮説を立てています。

1つは、「サンタさんをいつまで信じていたか?」のような話ですが、この時期は現実(リアル)と空想(ファンタジー)の境い目が曖昧であることだと思います。それゆえに、想像力や創造力が豊かに発揮され、自由で柔軟な発想をすることができます。思考の土壌が柔らかいこの時期に、活動というクワで耕しておくことは長い目で見て実り多い人生なのではないかと考えています。「人間の頭で考えられることは実現可能なこと」と最近よく耳にしますが、今の子ども達はこれから新しく生まれる職業に就いていくということを想定すると、より想像力・創造力に溢れた子ども達を育成していくことが大切なのではないかと考えます。

もう1つは、小さな生き物や無機物にも霊性が宿ると考えるアニミズムの考え方が(特に小さい年齢において)あることだと思います。それゆえ、細やかな感性が育ちやすいのではないでしょうか。あらゆる人・物に対して相手の立場というものがあるということを体感して学んでいきます。雨が降ってるという現象を「空が泣いている」と表現したり、「お人形さんをちゃんと片付けようね。寂しがってるよー」などという言葉で理解したりするのは幼児期ならではですね。前述のエピソードは年長組なのでそういった話は出てきませんが、年少組くらいであれば「ナスさん、かじられて痛かったねー」という会話があったかもしれません。

単純作業がAI化され、より高度で人間性を理解した仕事が必要とされるような時代が来ると思います。「コミュ力」などと言われますが、その根底にある人間の機微を理解した豊かな感性がこれまで以上に求められるのではないかと考えます。

そして、最後に、何と言ってもこの時期の子ども達は“素直”で“純粋”で、「今」を真剣に生きているんですね。時間軸が完成されていない子ども達は、先の見通しが立ちにくい分、今その瞬間を損得など考えず真剣に生きています。気分が乗らないことはあっても、“てげてげ”という感覚は持っていないんです。教育には感動が大切だとよく言われるように、子ども達は幼稚園の中で人・モノ・出来事に出会って、驚き・感動する中で学び、そこで経験したことを記憶の奥深くに刻みこんでいきます。そうやってこの世界というものを理解していきます。きっとそれは、机の上で“1+1=2”が分かる喜びよりも大きくて、その子達がこれから80年・100年と生きていく上でとても大切なことなんじゃないでしょうか。

そんなことを思い巡らせながら過ごした夏でした。

2学期は行事が多くなります。

子どもの成長の成果としてご覧になる保護者も多いかと思いますが、ぜひメイキング(プロセス)の部分にも注目してくださいね。私達もできるだけお便りやブログ等で細目にお伝えしていきたいと思っています。

 

園長 三宅貴之

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